ベンチャー企業の女社長・葵と、彼女のもとで仕事を始めた専業主婦の小夜子。
まるで“対岸”にいるような二人の出会いと友情、変化の物語。
一度中学生の頃に読んだことがある本です。
母が図書館で借りてきている本の中にあって、なんとなく手に取ってみたのがはじまり。
内容はものすごくハラハラドキドキするわけでも、手に汗握る展開があるわけでもなくて。
だけどなぜか引きつけられて、最後まで読み切ってしまった覚えがあります。
物語の内容はあまり記憶にないものの、どこか印象的な一冊だった不思議な物語でした。
そこで大人になった今、もう一度読んでみたいなと思ったのです。
読んでみたら、葵と小夜子の年齢がなんと35歳!今の自分と同じくらいの年!
当時は「大人の女性たちのおはなし」という認識でいたけれど、いつの間にか私も「大人の女性」になっていました。
…なっているのかな?
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「あたしなんにもこわくないの。そんなとこにあたしの大切なものはないの。」
以前読んだ時の記憶はほとんどなかったのに、このセリフが出てきた途端にすごく懐かしい気持ちになりました。
これは当時すごくはっとさせられた言葉というよりは、心に静かに染みわたった言葉。
本をお風呂に持ち込んでまで読んでいて、湯船に浸かりながらこの一節を声に出して読んでみたりしたことまで思い出しました。
中学生の頃に読んだときと同じで、やっぱり今回も全体を通して、大きく心が揺さぶられることはありませんでした。
でも、それがこの物語の好きなところ。
昨夜突然、嵐で好きだった「恋はブレッキー」、「とまどいながら」という2曲を思い出したけれど、この物語は後者の感じですな。
(恋はブレッキーを初めて聞いた時、イントロで爽やかセンチメンタルな曲かと思ってたら13秒後に急展開で「あ、そっち系だったのね」と思った記憶)
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分かりやすく正反対の性質を持ったふたり。
でも本当は、誰しもが「自分以外の人」を“対岸”にいる存在として感じているのかもしれない。
完全には分かり合えないもどかしさやすれ違い、終わりの見えない距離は、きっとどこまでもなくならない。
それでも私たちは、誰かと近づこうとすることをやめられないんだよな。
人間してますね。
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