読書の秋ですね。
ということで今週は、久しぶりに読んだ本達の紹介をしようと思います。
と言っても全部、今年の春夏に読んだものだけど。
漫画『ここは今から倫理です。』
以前紹介した漫画▼の作者さんが、こちらの作品も描いておられるとのことで。
倫理は主に 自分がひとりぼっちの時に使う
という言葉が力強く胸に響いた、倫理の先生と生徒たちの物語。
タイトルは何度か聞いた事があるんだけどスルーしていて。
だけど『蛍火艶夜』が個人的にとても良かったので、「それならこちらも!」と大人買いしました。
うんうん、予想通り私好みのお話し。
倫理って、生きている限りまとわりついてくるもののはずなのに、人によっては全然視界に入ってない気がする不思議なもの。
それから、誰かから授けられた倫理を疑うことなく生きてる人も多い。 私自身も、そんな面は多い。
高校生の頃は倫理の授業を楽しみにしていたけれど、私の学校では現社のなかに一瞬出てくるくらいで残念だったこと、だけど現社の資料集の倫理っぽいページだけは、自ら進んで読んでたことなんかを思い出した。
そして、群像劇好きにもたまらない構成でした。
群像劇は、
「この子の人生は私の真ん中あたりと一緒、この子の体験は私の左下あたりと一緒、この子の感情は私の奥底のあたりと一緒。」
ってな風に、色んな「人」の生に触れながら、自分が歩んできた人生の線も濃くなったり、輪郭や影がさらに足されていく感覚を得られるから好き。
一見自分とはあまり共通項がないような人の話が、思わぬ形で自分の中の点と点を繋いでくれることだってある。
色んな人間に触れることって、倫理だ。
「善く生きる」ということを考えたい人に。
本『残された人が編む物語』
タイトル通り、突然遺されてしまった人たちが、自らの明日のために“物語”を探していくお話し。
母親としての役目が終わり、娘としての役目が終わった今、なにをして時間をつぶそう。
そうだった。
私の母がなくなれば、私は娘でもなくなって、予想通りに時が過ぎればあと16年後には、母親という役目に命を割くことももほぼ無くなるのだ。
そんな当たり前だけど衝撃的なことに気付かされた文章。
かさぶたを早く作るには、物語が必要
この世には色んな形の別れがあるけれど、なるほどたしかに。
自分で決めた別れより、突きつけられた別れの方をいつまでも引きずってしまうのは、前触れもなく物語が途切れるからなのかもしれない。
役目があるって、煩わしくて幸せ。
人はいつだって、物語を求めている。
私自身、自分にかちっとはまる物語を求めて、ずっとさまよっている気がする。 真実のようなものに何度も邪魔されながら。
本『正しい女たち』
「正しい」女 と 「正しい女」のグラデーションの中を覗き見できるような短編集でした。群像劇となっている話もいくつか。
そして、主人公が女性ばかりでないのも良かったです。
『描かれた若さ』というお話しでは女性の「客体化」が描かれていたけれど、その切り口が面白かった。
モノローグの思考にいちいち「あーわかるなぁ。」と思う。
皆が口々に当たり障りのないことを言い、私の発言はごく一般的なものとして流された。
なんて部分も、さらっと書かれているけどすごく好き。
たとえひとつの塊から抜け出せたとしても、違う塊に捕らえられるだけだった。
そうなんだよね。
理想に向かいたいということは、同時に何かから逃れたいということで。 逃れたって、きっとまた別の逃れたいものが生まれるだけ。
32歳の私も、それはここ数年ですごく思っていること。
それでも、逃れたい。
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