100万円もらっても渡さない1円玉

一人息子と私で外食。

日頃家でご飯を食べる時って、息子は私の斜め前にいて、こちらからは横顔が見える。

2人で外食をする時は、基本的に向かい合って座る。私の目の前に息子がいて、正面から顔が見える。

「改めて見ると、まだまだ小さくてきゃわ!」「一生懸命食べててきゃわ!」と、外食の度に頬が緩んでしまう。

自分の息子に対して「小さい彼氏」っていう感覚にあまり入り込みすぎたくはない。とずっと思い続けているんだけど、ごめん。
こんなんデートだわ。親バカ超えてバカ親だけど、息子は穏やかで優しくて、周りにいる沢山の人からも言われるほど、「ママLoveボーイ」なのだから。 今のところ!

そんな息子と向き合ってご飯を食べているうちに、ふと1人の男の子の存在を思い出した。

今日はその子との忘れられないお話です。

目次

Mくん

私が小6の時に、同じ学校で1年生だったM君という男の子。

地域のゴミ拾い?うろ覚え で出会った男の子。

後日校内で再会。 子供らしく元気ではあるものの穏やかで優しいM君。

なぜか私にすごく懐いてくれて、校内で会えば「ちひろちゃーーーん!」と飛んできてくれる。

休み時間、私が同級生の子たちとモー娘。のダンスを踊るのを見に来てくれたこともあった。

音楽会でピアノの伴奏をすることになった時、同級生から楽譜に応援メッセージを書いてもらったんだけど、ちゃっかりMくんにもメッセージをもらっていた。
赤文字の「がんばって」字きれい。



委員会の活動で1年生の教室で給食を食べることになった時、色んな子が「ちひろちゃん一緒に食べよう!」って言ってくれたけれど、私の腕をがっちりホールドするM君をどうすることもできず、彼の隣の席についた。

同級生といる事になんだか疲れ、癒しを求めて一人休み時間に1年生の教室へ行った時は、M君がコマの遊び方を親切丁寧に教えてくれた。
紐をぐるぐる巻きつけて、「いざ行かん!」と、M君含めた何人もの1年生男子たちと一斉にコマを放った。
どんぐりの背比べたちがクルクルと回り出すなか、「ちひろちゃんが1番上手!ちひろちゃんが1番!」とすごい勢いで主張してくれたM君だった。


6年生の時って、わりと同級生との人間関係にも悩んでたし、自分自身もやらかしてしまった事が多々あるし、後半は毎日「死にたい」と思ってた頃。
けれど、M君の存在に救われていたところって確実にあったな、と思う。

たった1年だけどM君と関わった思い出たちは、私の中に深く刻まれているのだ。

ご本人は覚えてないと思うんだけどね。

2008年4月1日

小学校を卒業したその後、5歳差の私たちが交わる機会なんて特にあるはずもなく、月日は流れた。

高校生になった私は、お友達と一緒にアコギを担いで路上ライブを始めた。

私たちの路上ライブは、高校生なりの目標を持ちながらも傍から見ればただの趣味。
だけど、そんな私たちでも、いや、そんな私たちだからこそ? 見知らぬ人が応援してくれる事も多々あったのだ。

それが大人の場合は、お菓子や飲み物などを差し入れしてくれる方々がいたり、シラフ、酔っ払い含めてお金を渡して下さる方々もいたり。

こういう沢山の一期一会も、路上ライブをやって良かったことのひとつだ。

高校2年生になる前の春休みのこと。 いつも通り駅前で歌っていると、3人…だったかなぁ、小学生男子!!達が現れた。

歌を聞いてるんだかなんなんだかよく分からないけど、なんか近くにいる。

と思ったらどっかに行った。

と思ったらまた舞い戻ってきた。 男子やなぁ。

一人の子が財布を出して、小銭入れの部分を開けて、「すっからかん!!」と言っている。

わざわざここに舞い戻ってきてやる事が所持金の確認なの、意味分からんすぎてかわいい笑笑。

微笑ましく思いながら1曲歌いきると、その男子たちがこちらに近づいてきた。 一人の子が「けっこういい歌だったよ」と言って、1円玉を渡してくれた。



え!何!すっからかんってそういう事だったの!?
私たちはお金を得ようとはしていないけれど、こういう路上パフォーマンスの仕組みを知ってんのか!?
まずそれにびっくり!
しかもしかも、なけなしの1円を私達にくれるのか!?
なんなの!?
めっちゃありがとう!?



そんな飛び出そうなハートを必死に抑え込みつつ、

「ええ!いいの!?ありがとう!!」

と感激しながら、その子の顔を正面から見たんだ。



ん? M君???

まさかのM君??????

M君だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

耐えきれず、ハートは口から溢れて出てきた。

「もしかしてM君? 私が6年生の時、1年生で、一緒によく遊んでたんだよー覚えてないと思うけど!」

この際、不審お姉さんになってもいい!と思わず言ってしまった。

1年生の頃のこと、特に男の子なんて余計に覚えてないよね!

そんなこと、同級生男子たちとの思い出話で学んでいるのに!

5歳も年下なのに嫌な気持ちにさせたらごめん!!

ただ、言いたくなってしまった!!

ほんとごめん!!

罰として、この後私の身に後悔が襲いかかるんだろう!!

心して浸ります!!




「覚えてるよ」 とMくん。

そこから後の記憶はおぼろげ。

特にオチもなく、たったこれだけの話なんだけど、ただただ、思い出の切れ端が私だけのものじゃなかった喜びに、胸がいっぱいになったのでした。

この時M君からもらった1円玉は、間違って使ってしまわないように、名前を書いて今でも大切に持っている。

名前を書いてるもんだから、この記事に載せたものはその1円玉じゃなくて、ただの1円玉です。

2008年4月1日の路上ノート。1円だけじゃなく、飴2つもくれたらしい。

16年越し

この話は、この出来事が起こったその日からずっとずっとどこかで書きたかったこと。

だけど、何かを世に出す時って「今こそ!」ってタイミングがあるじゃない。

それを何年も待ってたり、何度も何度も掴みそこねたりして今日になりました。 だけど、今日で良かったんだと思う。

今年1年生で、穏やかで優しくて、ママへの愛が重めの息子。

当時1年生で、穏やかで優しくて、「ちひろちゃん」を慕ってくれた男の子。

突然ダブって見えてしまった。そんな今だから、良かったんだと思う。

28歳になる彼が、幸せでありますように。

この気持ちの悪いおばさんのブログが、絶対に彼に届きませんように。

今日も私は、息子を愛している。

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この記事を書いた人

ちぃ 島根出身 兵庫県在住 91年生まれ

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